オーラルケアのスペシャリスト!歯科衛生士のキャリアについてのコラムです。
歯科衛生士は、その専門性を活かすことで、労働市場の多様なニーズへの対応が期待できます。
本記事では、歯科衛生士のキャリアについてお伝えします。
歯科衛生士とは
歯科衛生士は、歯や口腔などの健康を支える国家資格の専門職です。
歯科予防処置・歯科保健指導・歯科診療補助の3つの業務が歯科衛生士の役割です。
歯科助手と歯科衛生士の違い
歯科助手と歯科衛生士の業務は異なります。
歯科助手は受付業務や診療補助、器具の準備や洗浄、片付け、クリニックの清掃など、一般事務職としての業務となります。
患者の口内に触れる事はできません。
一方、歯科衛生士は専用の器具を使った虫歯予防処置などが可能です。
また、歯科衛生士は歯科衛生士法に基づいた国家資格であり、医療従事者となります。
歯科衛生士になるには
歯科衛生士になるには、まずは国家試験(歯科衛生士国家試験)の受験資格を得るために、歯科衛生士養成機関(専門学校、短期大学、大学)で学びます。
修学期間は3年以上です。
更には、4年制大学を出て、研究者として大学院で学ぶキャリアパスもあります。
受験資格を得た後は、歯科衛生士国家試験に合格後にすることで、歯科衛生士になれます。
国家試験の合格率は近年95%前後で推移していますので、受験資格を得るまでの期間が重要になります。
歯科衛生士は人手不足
労働市場において、歯科衛生士は人手不足です。
歯科衛生士の有効求人倍率は2.81倍で、全職業の有効求人倍率である1.20倍に比べても高く、売り手市場となっています。
【参考】
・職業情報提供サイト jobtag(歯科衛生士)
・一般職業紹介状況(令和4年1月分)について(厚生労働省)
人手不足の要因としては以下が挙げられます。
<人手不足の要因>
・歯科医院の数
・男性より女性の歯科衛生士が多い
歯科医院の数
歯科診療所の数は68,940軒です。
10年で10,000軒近く増えています。
よく比較されますが、これはコンビニエンスストアの数(56,936店舗(2022年1月時点))よりも多いです。
前述した有効求人倍率の高さと、歯科医院の増加数をみても、歯科衛生士の人手不足は感じ取れます。
男性の歯科衛生士はほんのわずか
歯科衛生士数は142,760人で前回(平成30年末)に比べ、10,131人(7.6%)増加しています。
【参考】
・就業者数(厚生労働省調べ)
しかし、歯科衛生士は女性の割合が圧倒的に多く、男性の歯科衛生士は全体の1%に満たないといわれています。
(「歯科衛生士の勤務実態調査報告書」より)
また、歯科衛生士数の内、職に就かない非就業者も一定数(10%程度)存在し、理由の一部が「出産、育児のため」となっています。
育児の場合、一度離職したら、子が成長するまでの間、10年以上復帰できないケースもあります。
男性の育児参加率を高めることにより、歯科衛生士の就業率を高めることができるかもしれません。
平均年齢と勤続年数
歯科衛生士の平均年齢は、31.2歳、勤続年数は5年程度です。
勤続年数の短さから、結婚や出産などのライフイベントによる離職が多いことがうかがえます。
平均年収
日本における歯科衛生士の平均年収は300~400万円です。
仕事にやりがいを感じるものの、待遇面の不満も人手不足要因の一部と考えられます。
オーラルケアのプロとして多様なニーズ
歯周病の予防について専門的な知識を持つ歯科衛生士は今後、多様なニーズの期待が持てる職業です。
アルツハイマーなど現代病の原因は、歯周病から発展するといわれており、歯科衛生士の役割の重要性は、医学の進歩とともに高まっています。
高齢化社会において、予防医療のニーズは高く、これからの歯科のニーズは「治療」⇒「予防」へではないでしょうか。
歯科衛生士の働き方の傾向
日本歯科衛生士会:「歯科衛生士の勤務実態調査報告書」(2020年発表)より、歯科衛生士の働き方の傾向を以下にまとめます。
<働き方の傾向>
・常勤者が56%、非常勤者が39%。
・20歳代後半~30歳までに結婚・出産・育児などの理由で一旦退職し、30歳~40歳以降で復職する傾向がある。
・仕事に対するやりがい、価値を感じている人は8割を超える。
・一方で、転職を考えている人は2割、歯科衛生士以外の職の希望者も若干存在する。
・多くは歯科診療所(歯科医院)勤務者である。
・転職や復職、非常勤での勤務はしやすい。
歯科衛生士の就職先
歯科衛生士の主な就職先は以下となります。
全体の90%以上が、「歯科医院(デンタルクリニック)」での勤務です。
・歯科医院(デンタルクリニック)
・大学や総合病院
・市町村保健センター
・介護・福祉施設
・歯科関連を取り扱う企業
歯科関連企業
企業へ就職する場合は、医療機器メーカーなどが考えられます。
・歯科医院や病院、学校、ドラッグストアなどへの営業
・予防歯科に関する商品開発、研修・セミナー講師
企業勤務となると、コミュニケーション能力や主体性など求められる能力も変わってきます。
歯科衛生士の転職
歯科衛生士を対象とする専門の転職サイトやエージェントもあります。
それだけ、労働市場でのニーズの高さが感じ取れます。
【歯科衛生士を専門で扱う転職支援サイト(PR)】
前述の有効求人倍率が示す通り、歯科衛生士の求人は安定しています。
同業種内で考えられる、主な転職先は以下の通りです。
- 勤務先医院を変える
- 歯科医院⇔大学や総合病院
- 歯科医院⇔市町村保健センター
- 歯科医院⇔介護・福祉施設
異業種への転職
歯科衛生士から異業種への転職としては、以下が考えられます。
・歯科関連を取り扱う企業
・講師業、歯磨き教室、相談やアドバイザー
・美容や健康関連業界
・フリーランスでの歯科衛生士
異業種への転職は、求められる能力も変わってきます。
歯科衛生士のキャリアアップのための資格
認定歯科衛生士
認定歯科衛生士とは、各特定の専門分野において高度な業務実践の知識・技能を有すると認められた歯科衛生士です。
詳しくは以下を参照ください。
他の資格や能力と掛け合わせて、独自のキャリアアップ
「認定歯科衛生士」以外にも、歯科衛生士と他の資格を掛け合わせて、キャリアアップをはかる手段もあります。
以下に、相性の良さそうな他の資格を記載します。
歯科衛生士×キャリアコンサルタント
前述したとおり、歯科衛生士専門の転職サイトもあり、歯科衛生士をはじめとした医療従事者のキャリア支援を専門に扱う、キャリアコンサルタントには価値があります。
医療従事者に対するキャリアアドバイザーの求人も増えてきています。
歯科衛生士としての専門性を活かして、キャリア支援、歯科衛生士の人手不足や働き方の改善を促す仕事は、社会貢献にも繋がります。
歯科衛生士×ケアマネージャー
ケアマネージャーには受験資格がありますが、歯科衛生士として歯科医院などで働くことで、受験資格が得られるため、相性の良い資格といえます。
具体的には、「医療などの法的資格を持ち、実務経験5年以上かつ900日以上」の条件がケアマネージャーの受験資格に該当します。
ご存じの通り、ケアマネージャーは介護領域の専門職です。
少子高齢化社会の現代では、歯科衛生士と掛け合わせることで、労働市場での価値は高くなります。
歯科衛生士×保育士
保育士資格も相性の良い資格といえます。
小児歯科や託児など、歯科との接点が多く、保育士の知識を活用できるシーンが期待できます。
「保育士がいる歯科医院」、もしくは「歯の指導ができる保育士」は魅力的です。
保育の知識は、医院でのお子さんの対応にも役に立つはずです。
歯科衛生士×クリニカルコーディネータ
クリニカルコーディネーターはコミュニケーションの専門家です。
歯科医師や歯科衛生士に代わり、患者さんの悩みを一緒に解決するカウンセラーとなります。
歯科衛生士としての専門性を有しながら、患者さんの心に寄り添うことができる、魅力的な組み合わせではないでしょうか。
クリニカルコーディネータは資格ではなく、業務上の役割です。
近い資格としては、認定資格である、TC(トリートメントコーディネーター)があります。
その他では、歯科技工士や看護師と組み合わせることでキャリアアップをはかれますが、受験資格までに数年学びなおす必要があるため、今回は比較的短期間で取得できる資格を中心にまとめました。
歯科衛生士から独立開業も
歯科衛生士の資格を活かして、独立開業するキャリアプランも考えられます。
ニーズとしては高齢者(福祉)、美容などの分野です。
サロン経営の場合、場所・設備で費用がかかることが課題です。
また、顧客をもつことでフリーランスとして働ける可能性もあります。
サロンの経営では、以下のよう開業が考えられます。
・デンタルエステ サロン
・歯磨き指導サロン
前述のとおり、歯科衛生士のお仕事は将来性が高く、他にも今後、新しいビジネスモデルが出てくる可能性も十分考えられます。
まとめ
いかがでしょうか。
歯科衛生士は求人倍率も高く、資格取得により安定的に働けるメリットがあります。
ニーズの高い職業でもあり、今後の成長も期待できるため、歯科衛生士はおすすめの資格といえそうです。