保育士のキャリア

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子どもが好きな人にとっては、憧れの職業でもある保育士のキャリアについてのコラムです。

保育士は求人倍率も高く、ニーズのある職業です。

本コラムでは、保育士の現状ややりがい、保育士になるにはどうしたらよいか、働き方やキャリアパスなどについてお伝えします。

保育士とは

児童福祉法第18条において、「登録を受け、保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者」と規定されています。

過去には、「保母」や「保父」とも呼ばれていたようです。

保育士は国家資格

保育士は「名称独占資格」の国家資格です。

保育士でない者が保育士またはこれに紛らわしい名称を使用してはならないという名称独占規定や、対人援助職としての義務としての守秘義務や信用失墜行為の禁止なども規定されています。

働き場所

保育所のほかに、以下の施設で働くことができます。

<保育士の働き場所(保育所以外)>
・児童養護施設
・知的障害児施設
・知的障害児通園施設
・盲ろうあ児施設
・肢体不自由児施設
・重症心身障害児施設
・情緒障害児短期治療施設
・乳児院
・母子生活支援施設
・児童厚生施設
・児童自立支援施設

保育士の求人倍率

保育士は人手不足もあり「売り手市場」です。

「保育士の有効求人倍率の推移(全国)- 厚生労働省」によると令和4年1月時点での保育士の有効求人倍率は2.92倍です。
これは、保育士の求人の一人当たり2件以上の求人があることになります。

保育士の求人は都道府県毎に違います。
多い県では4倍を超えています。
少ない県でも1倍台の後半なので、ニーズは高い職種です。

<出典:保育士の有効求人倍率の推移(全国) – 厚生労働省>

保育士の給与、年収

保育士の平均給与は約24万円、賞与を合わせた平均年収は約374万円です。
(平均年齢:37.6歳、平均勤続年数:7.7年)

平均年収は他の職種と比べて低い傾向ですが、近年は、処遇改善に向けた取り組みが行われています。

保育士の確保に向けた制度の拡充が背景にあります。

<参考>保育士の現状と主な取組(厚生労働省)より抜粋

処遇改善の対策実施により、年収は徐々に増加傾向です。

特に役職者となる副主任保育士、専門リーダー、職務分野別リーダーに対して月額5千円から月額4万円への処遇改善の実施が進んでいます。

これから保育士を目指そうと考えている方にとっては、明るい材料です。

<出典:e-Stat_政府統計の総合窓口:令和2年賃金構造基本統計調査>

保育士の働き方

様々な雇用体系

正規雇用と非正規雇用があり、ライフスタイルに合わせた働き方を選択できます。

非正規雇用の場合、パートの時短勤務も可能で、パート保育士の場合は3~4時間の短時間勤務のケースも多いです。

シフトを組んでいる保育園が多い

早番(7:00~16:00)、中番(8:00~17:00)、遅番(10:00~19:00)のように、シフトを組んで勤務している保育園が多いです。

ただし、延長保育(22時頃までなど)、夜間保育(深夜、早朝)、休日に保育などを実施している園もあり、時間外のシフトも考えられます。

保育園は女性の割合が高い職場

保育園は女性職員の割合が高い職場です。

女性の割合は全国平均で95.8%。
男性職員は4%とのことです。

保育士のやりがい

保育士の仕事は、「子どもの命を預かる」の印象から、責任もあり、プレッシャーも感じる大変な仕事ですが、その反面やりがいもたくさんあります。

子どもと関われる

子どもが好きであれば、子どもたちと一緒に過ごせる時間があること自体がやりがいともいえます。

子どもの笑顔

元気に登園してくる子どもたちの笑顔、保育中の笑顔に接することにやりがいを感じる保育士も多いようです。

子供の成長

子どもの成長に立ち会える瞬間はやりがいを感じます。

苦手なことを克服したときなども成長を感じる瞬間です。

保護者からの相談

保護者から育児についての相談を受ける際は、保育のプロとしてやりがいを感じるのではないでしょうか。

保護者との信頼関係の構築にも繋がります。

また、アドバイスなどの過程で、保育士自身も勉強し、知識がより深まることも自身の成長に繋がります。

ありがとうの言葉

保護者からの「ありがとうございます」の感謝の気持ちや、感謝が伝わる対応はやりがいを感じます。
特に、保護者とのコミュニケーションは苦労している保育士も多いと思います。

保護者から保育士への感謝の気持ちが伝われば、保育士自身のやりがいにも繋がります。

保育士の大変な仕事

どんな仕事でも同じですが、大変な仕事もあります。

子どもの命を預かる責任

保育園では乳児から子どもを預かるため、常に寄り添い、観察し、安全に保育が必要です。
怪我や事故のことを考えると、プレッシャーになることもあるでしょう。

保護者への対応

保育士は、保護者と信頼関係の構築が大事になります。
保護者からのクレームや理不尽な依頼なども少なからず発生します。

子どもとの関係

子どもの性格も多様なため、関わり方で悩んでしまうケースも多いようです。

保育士としての経験を積んでゆくことで、子どもとの接し方を学んでいくことができますが、0歳~6歳まで日々、成長し続ける子どもを観察し、子どもに合わせて臨機応変な対応が求められます。

職場の人間関係

どんな職場でも人間関係はあります。
保育士の職場も同じで、保育士の退職理由の3割が職場の人間関係の悩みによるものです。

幼稚園教諭との違い

保育士と幼稚園教諭には役割の違いがあります。
ご自身がどちらの役割で子どもに接したいかなどで、キャリアの選択をすることになります。

保育士と幼稚園教諭との比較

保育士幼稚園教諭
役割「保育」を担う「教育」を担う
管轄厚生労働省文部科学省
産業の分類医療・福祉教育・学習支援業
必要資格保育士(国家資格)幼稚園教諭免許(国家資格)

保育士になるには

保育士の資格を取得するには、以下の2通りの手段があります。

①指定保育士養成施設へ通学する
都道府県知事の指定する保育士を養成する学校その他の施設で所定の課程・科目を履修し卒業する。

②保育士試験に合格する

上記いずれかに該当する場合、保育士の登録および保育士証の交付を受け、保育士になれます。

保育士試験の受験資格

最終学歴で受験資格が異なります。

大学、短期大学卒

最終学歴が大学や短期大学卒業の場合、保育士とは関係のない学部・学科であっても、 受験資格があります。

専門学校卒

以下の2点両方を満たせば、保育士とは関係のない学科であっても、受験資格があります。

・学校教育法に基づいた専修学校であること
・卒業した過程が修業年限2年以上の専門課程であること

大学・短大在学中

2年以上在学していて、62単位以上修得済みであれば、保育士とは関係のない学科であっても、受験資格があります。
上記は中退者も同じです。

短大在学中の場合は、同年度での卒業が受験資格の前提になります。

高校卒

最終学歴が高校卒業の場合は、卒業年度によって受験資格の有無が変わります。

・1991年(平成3年)3月31日以前に卒業
受験資格があります。

・1991年(平成3年)4月1日以降に卒業
保育科を1996年(平成8年)3月31日以前に卒業で受験資格があります。

上記以外は実務経験が必要です。
実務経験は「児童福祉法に基づく児童福祉施設」で2年以上かつ2880時間以上となります。

最終学歴が中学卒業も含め以下に詳細が掲載されていますので、ご確認ください。

<出典:一般社団法人 全国保育士養成協議会:受験資格>

保育士試験の合格率

近年20%前後の合格率で推移しています。

合格率が低い要因としては、前述した受験資格「保育士とは関係のない学科であっても、受験資格があり」が少なからず関係していると考えられます。

予備知識のない受験者が多いため、ゼロからの学習となるからです。

また、筆記試験は範囲が広く、9科目全てに合格する必要があります。

参考までに、保育士試験の直近の結果が以下で確認できます。

<参考:保育士試験の実施状況(令和3年度)(厚生労働省)>

保育士のキャリアパス

保育士の役職は、どうしても園長が目立ちますが、他にも役職があり、キャリアアップが目指せます。

保育士のキャリアアップや処遇改善を目的につくられた制度として「処遇改善等加算Ⅱ」があります。

<処遇改善等加算Ⅱによって新たに追加された役職>
・職務別リーダー
・専門リーダー
・副主任保育士

キャリアアップがしやすくなれば、自身のスキルの向上と、処遇改善にもつながってきます。

<処遇改善例>
職務分野別リーダー:月額5千円の処遇改善
副主任保育士、専門リーダー:月額4万円の処遇改善

<参考:平成 30 年度 子ども・子育て支援新制度 市町村向けセミナー資料(内閣府)>

<参考:令和2年度における処遇改善等加算の運用の改善 – 内閣府>

保育士と関連する仕事

子どもに関わる仕事が好きな方は、保育士の他に関連する仕事があります。
以下にいくつか紹介します。

ベビーシッター

依頼者の指定する場所で子どもの保育をする仕事です。

法的資格は必要ありませんが、一定のスキルがあることを証明できるため、保育士資格、幼稚園教諭の資格は信用されやくいため活かせます。

参考までに、ベビーシッターには以下のような民間資格があります。

・「認定ベビーシッター」
・「ベビーシッター(JADP認定)」
・「ベビーシッター技能認定」

幼稚園教諭

前述しましたが、保育士と幼稚園教諭には違いがあります。

保育士の独立開業

保育士で独立するキャリアも考えられます。
主にフリーランスとして働くケースです。

独立した保育士は、ベビーシッターや保育ママなど多様な働き方があります。

収入は不安定です。しかし、工夫によって高収入になることも可能です。

自分に合った働き方ができるためメリットは大きいです。

独立保育士の年収

フリーランスで活動する保育士の年収は、雇われで勤務する保育士と大差がないと言われていますが、工夫次第です。

ベビーシッターなどは、保育士の実力次第で高収入が得られるケースもあります。

独立保育士の働き方

誰からも指示を受けることなく働けるメリットがあります。

一人にしっかり寄り添う働き方を希望するなら、独立保育士は合います。

保育ママになる

保育ママ制度を活用することで、保育ママとして開業するキャリアもあります。
保育施設などが不足している中で、ニーズのある制度です。

保育ママ制度は「家庭的保育事業」が正式な名称です。
法的には、平成22年4月に改正された児童福祉法により、保育サービスの普及促進・支援充実のために国が定めた制度です。

「保育ママ」または「家庭的保育事業者」、「認定家庭福祉員」など呼ばれ方が地域で異なります。
自治体から補助金が出る場合もあります。

保育士と保育ママの違い

保育ママは保育士と違いがあります。
保育施設での集団保育に対応しているのが保育士です。

一方、小人数保育で0~2歳までの子どもを自宅などで預かり、子どもの定員は基本的に3名までの保育が保育ママです。

<参考:待機児童の解消や幼児教育と保育の質の向上等を図る(内閣府)>

<参考:家庭的保育事業の充実について(厚生労働省)>

<参考:家庭的保育事業の実施について(厚生労働省)>

顧問保育士

保育施設のコンサルのようなイメージです。
保育コンサル用の事務所を開設し、複数の保育施設や企業と、顧問契約を結んで提携する働き方です。

顧問保育士のニーズはこれからだといわれています。

保育士ライターとして情報発信する

保育士経験を活かして、ブログなどで情報発信します。

収益化が目的なら、独自ドメインを取得して、サイトを開設することで収益に繋がります。

根気が必要ですが、収益とWeb関連スキル修得を目指せます。

派遣保育士

女性の保育士が多い中で、最近注目されている働き方として、派遣保育士があります。

ライフスタイルに合わせた働き方ができます。
出勤日数や時間がアレンジできる点が、その理由です。

収入はパート、アルバイト以上、正社員未満といった感じです。

なお、派遣保育士は保育士人材派遣会社に雇用されるため、フリーランスではありません。

セカンドキャリアに保育士(シニア保育士)

60歳以上の保育士が増えているようです。

「子どもと関わる仕事がしたい」といった興味を踏まえてです。

福祉医療機構のデータによると、保育施設で働く60歳以上の割合は6.4%。うち70歳以上は0.7%いるといわれています。

保育士の人手不足による、待機児童解消のための対策としても注目されています。

<参考:ハローワークにおける 60 歳以上の保育士に係る求人・求職状況について(厚生労働省)>

まとめ

保育士は求人も安定しており、資格を持つことで活躍の場が広がるといえます。

一方で、人手不足、人間関係が原因の離職、賃金の低さなどの課題も抱えています。

しかし、今後は保育士の処遇改善、働き方改革などの加速も期待できるため、これから保育士を目指す方にとっては、条件が良くなる可能性も高いといえます。

キャリアパスの多様化、独立開業やフリーランスといった働き方も増えつつあるため、保育士になりたい方、保育士資格を活かそうとお考えの方は、特定の働き方にこだわらず、いろんな視点で検討してみてください。